悪質二種類ガン闘病記 ④    いざ手術に!



4月20日 膀胱ガンに向かって立ち向かおう。明日はいよいよ手術だ。仕事の段取りも何とかうまく収まった。特段の心配事は無し。いざ出陣!
事前に調べてみたら、実にしつこく再発を繰り返し、遂には膀胱摘出に至る人が7割近くもいるという記事を見てしまった。いやな暗い気持ちになっていたのだが、考えてみれば3割の人は完治するという事にもなる。これから戦おうとしている時に、戦意喪失している訳にはいかぬ。自分を奮い立たせ、本当に腹の底からの決意を確認し、家族にも覚悟を告げて病院に向かった。

「明日は妻も一緒で、手術中待機していてくれる。万が一手術中に何かあっても対応してくれるだろう。取りあえず命に関わる手術ではない。」

自分に言い聞かせながら、それでもなお重くのしかかる不安を胸に、電車、バスを乗り継いで目的の病院に到着。

1階の入院受付で健康保険、高額医療費、民間の医療保険、入院誓約書などの手続きを済ませ、指示を受けた入院病棟の5階ナースステーションへ。ここの受付カウンターで、外来棟1階の指示による一連の書類を提出し待機。程なく担当の看護師が現れ別室へ案内された。

「看護師の岩崎です、宜しくお願い致します。かたりじさんの入院にあたり看護師全員で、かたりじさんの快適な入院生活をサポートするべく、心くばりに努めたいと思います。医療的な事ばかりでなく、お仕事についての心配事やご家族への思いなど、色々と不安や問題をお持ちの方もいらっしゃいます。かたりじさんに付きましても、何かお有りでしたらご遠慮なくおっしゃって頂きたく存じます。」

大変丁寧な看護師さんで、とりあえず緊張が少し柔らいだ。
その後、食堂、談話室、家族との懇談室、浴室、洗面、トイレ、採尿コーナーや何カ所かの部屋を案内され、512の表示がされた病室に連れていかれた。

岩崎看護師「今日は夕食前に検温、採血、採尿、血圧計測と担当医の面談(インフォームドコンセント)、麻酔医の説明があります。その後は何もありませんので、ごゆっくりおくつろぎ下さい。3時から4時までは浴室の予約をとってありますので、入浴を済ませておいて下さい。明日は8時30分にお迎えに来ます。そのまま手術室にお入り頂きますので、それまでにお通じを済ませておいて下さい。お通じがどうかと思われる時は、下剤をお出ししますので、おっしゃって下さい。何かお聞きになりたい事はありませんか。」

実にテキパキとして無駄が無く、それでいて冷淡でもなく、気がつけば朝からこびり付いていた不安も割と薄らいでいた。

「失礼します。担当の宮園です。」

明るい元気な声の主が、院内着に着替えていた私のそばに来てご挨拶です。どうやら、このナースが面倒を見てくれるらしい。超新人の雰囲気に包まれた元気ナースが

「かたりじさん、宜しくお願いします。入院されているあいだ、お付き合い下さいね。早速ですが、血圧、検温と採血をお願いします。」

押してきたワゴンにはノートパソコンの他聴診器や採血の道具、血圧計、その他諸々の計測器具が乗っている。テキパキと作業をすすめながらも眼は真剣そのものです。新人らしさモロ出し状態ではありますが、見ていて不愉快にはなりません。初々しく清潔な元気ナースの一年生です。

翌朝の目覚めは早かった。6時には起きていた。興奮していたからではない。カーテンを引く音と朝の明るさに自然と目が覚めてしまった。日々慣れ親しんできた朝との違いを確認するまで、多少の時間を要したものの、周りを見回し4台のベッドを見て納得した。
朝食は抜きだった。元気ナースが顔を出し

「おはようございます。ゆうべは眠れましたか?」

「はい、よく眠れましたよ。」

会話を交わす間もなく体温計を渡された。

「この体温計はかたりじさん専用の体温計です。個別棚(ベッド脇の引き出し、ロッカー、小テーブル一体型)の引き出しに入れておいて下さいね。毎朝この時間に体調データをお伺いにきますので、その時までに体温を計っておいてください。」

「はい、わかりました。」

血圧を計りながら脈をとり、パソコンに入力をしたり、忙しく4人のデータを収めて、元気看護師さんが隣の病室へ向かった時の時刻は6時30分でした。

8時30分、お迎えのストレッチャーを持ってきたのは元気看護師さんです。病棟の池上先生も一緒です。元気看護師さんに左手首をつかまれ、氏名や必要事項の文字、バーコードが打ち込まれたテープをリング固定されました。ストレッチャーに乗せられて手術室へ向かう間、池上先生が何かと話しかけて下さいます。エレベーターで2階総合手術ゾーンに入り、自動ドアを開けて中のフロアまで来た時に

「かたりじさん、私はここまでです。後は手術室の先生方がお守りして下さいます、ご心配なく。」

元気看護師さんがそう言ってストレッチャーを手術室の担当看護師にバトンタッチです。手術室の看護師に引かれて別の自動ドアの中に入ると、本物の、テレビで見たような手術室が無機質に広がっていた。そばに池上先生が居てくれたのが救いで、こみ上げてくる恐怖に何とか耐えていたが、恐ろしい部屋は冷たく、白々として、そこかしこで動く先生や看護師さん達の声がやたら大きく響いていた。

ストレッチャーが移動して私は手術台に移された。
着衣は全てはぎ取られ、手術台上で足を伸ばして座らされ、上半身前倒しのエビ曲げ状態です。

手術室看護師 「背中をできるだけ丸めて下さい。背骨に麻酔の注射をしますからね、その前に局所麻酔でチクッとします。ごめんなさいね。」

昨日の麻酔医の説明では、脊椎の空洞部分にカテーテルを差し込み、そこに麻酔薬を注入するらしい。この麻酔は下半身部分麻酔に最適な方法で、患者は意識感覚が犯されないため、問いかけや表情などで確認しながら投与できるという大きな利点があるという事です。できるだけ少量の投与で、少しずつ確認しながら手術の状態に合わせるという事です。

程なく、冷たい何かが太ももに触れてきました。

「冷たいですか?」

「はい」

「今度はどうですか?」

「冷たいです。」

「今度はどうですか?」

このやりとりを何度か繰り返している内に、腰から下の感覚が全く無くなってしまった。何をされても何も感じなくなったところで、

「かたりじさん、始めます。」

の声。これは池上先生の声だ。明かりが消え、モニターが浮かび上がりました。周りが暗いので、先生の姿は確認できないが、「何処かに居て私から見えるモニターとは別のモニターに向かっているのだろうな」と何となく思っていた。

その時、私から見えるモニターに内視鏡が捕らえている映像が映し出された。患者にも状況をしっかりと見せながら、手術が行われていきます。横向き(のように見える)になった電気メス(らしき物)がキノコ状の患部を少しずつ削り採っていく。何度も何度も往復しながら、少しずつ削り採っていく。

その内、突出部は無くなり平たい面だけになった。ここで、手術が中断したのか、動きが無くなってしまった。一体どうしたのだろう。まずい事になってしまったのか、不安がよぎります。
(5に続く→16まで)

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