悪質二種類ガン闘病記 ⑨   再発襲来


季節は秋を迎え、健康不安も無くなり、仕事を一段深める事にした。今までは自宅の一室が事務所であったのを、得意先のオフィスに常駐する事として、日々発生する諸問題に即応できるようにした。詳細事項打ち合わせから、現場連絡などあらゆる業務が迅速化し、格段にやりやすくなった。充実した毎日を過ごしていた。今度の週末には、久しぶりに家族3人でドライブにでも行こう。

このようにして、穏やかに季節が移っていった。正月を迎える頃には、病気の事はすっかり過去の出来事となり、家族の脳裏から無くなっていた。正月の初詣は例年、亀戸天神と決まっていたので、今年も早起きをして天神様へお参りです。そうこうしている内に成人式も過ぎ、2月の節分を迎えた。

 

2004年2月(62歳)発症から約1年。うっすらと、あの不快感に似た、いやな感じに襲われた。不安にさいなまされながら、暫くは受け入れられずにいたが、極めて怪しい。だがしかし、ガンの再発と決まった訳ではない。単なる膀胱炎かも知れないし、周辺の不調という事も有り得る。いろいろ言い訳がましい理屈を並べてみたが、ガン再発の可能性からは逃げ切れなかった。段々と絶望感が膨らんできた。多分駄目なんだろうな、恐らく再発したんだろう。そう考えるのが、正しいのだろう。が、その結論を飲み込む事ができないでいた。

 

妻に隠している事ができなくなった。彼女の言葉は明快で「すぐ病院へ行きましょう。」だった。私は、予約の治療をスッポカシた罪悪感もあり、ぐずぐずと仕事にしがみついていた。だがそれも、いつまでも放置する訳にもいかず、遂に病院へ出かけた。重苦しい気分だ。電車もバスもうつろな気持ちで乗り継ぎ、やがて目的の病院へ。一からの初診を覚悟していたが、再診の期間内という事で、問診票は書かされたが、それでも再診という事だった。久しぶりに訪れた病院は変わってはいなかったが、患者が格段に増えたように思う。遠くからも来ているようだ。

 

18番診察室、森山先生、以前と変わっていなかった。呼び込まれて診察室へ入ったが、

先ず私から口を開いた。「先生申し訳ありませんでした。色々迷う事がありまして、民間療法と称するような事をやってみたりしたのですが、又戻ってきました。宜しくお願い致します。」

森山先生 「かたりじさん、分かっています。大勢の患者さんが、あなたと同じような道を歩いてきました。だけどそちらで得るものも有ったのでしょうが、膀胱ガンの場合は、それだけでは済まないようですね。皆さん、苦しみながらも病院から離れる事ができないのです。近代医学の助けを借りなければ病気に勝てないのです。」

採血、採尿と共に直ちに膀胱鏡検査が行われた。結果は黒。

森山先生 「かたりじさん、膀胱鏡で観るり、間違いなく再発ですね。細胞診の結果でレベル確定ができますが、一応手術という事をお考え下さい。更に、今回は手術後治療としてBCGを予定したいと思います。」

森山先生の話は更に続きます。「BCGとは結核菌を不活性化したワクチンで、結核予防に使われるものと同じ薬です。それを所定の濃度に薄めた液体を40~80CC(個人差により決定)膀胱内に注入し、60~120分後排出します。これにより、膀胱内壁が強い刺激を受け、ガン細胞にダメージを与えす。この時、患者さんによっては、激しい痛みを感じる方もいらっしゃいます。それ程でもない方もいらっしゃいます。激しい出血の方もいらっしゃいます。それ程でもない方もいらっしゃいます。個人差がありますので、試しながら進める事になります。このBCG注入を週に1回、8週間、合計8回行います。」

ここまで聞いて恐ろしくなったが、現在では最良の治療法との事で、逃げる訳にはいかなさそうだ。覚悟をしなければ。

1週間後、細胞診の結果により再発確定。手術は3月15日に決まった。BCGは手術後3週間経った時点で、膀胱鏡検査をしてから決める事になった。今日明日を通じて手術前検査。以前と同じように、CT検査、心電図検査、エコー検査など。更に今回は胸部レントゲン検査が加わった。

 

3月15日、この病院の朝の手術は早く始まる。8時30分ストレッチャーに乗せられて手術室へ。経験者ですから、慣れた態度で手術台上の人となり麻酔です。経尿道的膀胱ガン切除術の始まりだ。私も落ち着いてモニターの映像を見ていたが、今回は前の時と大分違うようだ。前回は突出したガンが有ったが、今回はそのような物は無い。平たいままの表面が赤く変色しているのが見えた。何カ所か有るようだった。それらの赤色部分が丹念に削り採られていく。その内、前回と同じように「5分削っては20分休み」の状態になった。「終わりました。お疲れ様です」の声が聞こえるまで、1時間位か、又はそれ以上か以下か、分からなくなっていた。

無事病室に帰り着いた時は、半眠り状態で、そのまま眠ってしまったようだ。深い眠りの中で母の夢を見た気がした。
(10に続く→16まで)

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