悪質二種類ガン闘病記 ⑩    恐怖のBCG治療



手術から3週間が経った。今日はBCG治療を始める事になっている。外来の18番診察室前で待つ。呼ばれて診察室に入ったとたん

森山先生からの特別指示が出た。「かたりじさん、今日はこれから始めるBCGの予備検査として、ツベルクリン検査を受けて頂きます。この反応状況によって、BCGの量と時間を決める事になります。」

意味が分からずにいると、更にたたみかけて

「かたりじさんは、小学校の頃に結核の検査でツベルクリン検査をした事があると思いまが、その時の事を覚えていますか。赤く腫れた状態を計って、BCG注射をする子、しない子、分けられましたよね。あれと同じ腫れ具合を観る訳です。」

先生が悪戯っぽく言うものだから、ますます混乱してしまった。先生の言葉は続きます。

「ツベルクリン反応検査とは、結核菌培養ろ液から精製した抗原を皮内投与し、48時間後の発赤状態を観る検査の事で、人により大きく腫れる人も、小さくしか腫れない人もいる。この発赤状態を観て、投与するBCGの量と滞留時間を決める検査の事です。」

なるほど、BCG治療をするためには必要な検査か・・・「全体外来の中程に、中央処置室があるので、受付にこれを出してツベルクリン注射を受け、あちらの先生の接種結果票を貰ってくるように」との指示を受け、中央処置室へ。

接種を受け結果票を持って、元の18番診察室看護師さんに報告。しばらくして呼び込まれた。

森山先生 「かたりじさん、今日はこれまでです。明後日に又、来て下さい。その時にツベルクリン反応の状態を観てBCGの量と時間を決めましょう。」

2日後、
森山先生「かたりじさん、今日からBCG治療を開始します。始めにお聞きしておきたいのですが、かたりじさんは子供の時に受けたツベルクリン反応の事は覚えていますか。」

私「はいよく覚えています。いつも陽性で、精密検査組でしたから。必ず後日レントゲン検査と喀痰(かくたん)検査を受けるよう指示されました。」

森山先生「そうですか。それで、その時の腫れ具合はどうでしたか」

私「いつも2センチ以上でした。」

そう言いながら3年生から4年生の頃、毎週病院でストレプトマイシンの注射を受けていた事を思い出した。

私「先生、胸部レントゲン写真に1カ所、子供の頃の結核治癒痕が写っていたと思うのですが・・・。」

森山先生「そうなんです。その事をお聞きしたかったのです。古傷のように思われますが、ご本人は自覚されていたかどうか。分かりました、納得できまた。」

そのようなやり取りの後、ツベルクリン反応の計測です。3.5センチ位ある。大きい、私自身も驚く位腫れている。

森山先生「かたりじさん、ずいぶん大きく腫れていますね。結核毒にはかなり敏感な状態と言えます。作戦は慎重に進めなければならないと思います。多くの医療機関で行われている標準的な治療方法では、80CCを2時間膀胱内滞留し、週1回を8週となっています。ただし、各医療機関が試行錯誤しながら、各患者さん対応というのが実情です。かたりじさんに関しては標準治療はそののままでは強すぎると思います。安全という観点からも、まず40CCを30分という事で始めて、状態を観ながら対応していく、というのはいかがでしょうか。」

私「分かりました。私も怖いので、緩やかなところから始めて下さい。」

これで決まりです。

森山先生「それでは、準備ができましたら隣の部屋からお呼びしますので、看護師さんの指示に従って下さい。」

診察室を出て、そのまま中待合で待つ。10分位経った頃「かたりじさん、どうぞ」ビニールエプロン、手袋、帽子、それにマスクもしている看護師さんに呼ばれた。

手術着のような重装備で「あちらのカーテンの中で、ズボンもパンツも脱いで下さい。バスタオルが有りますので、巻いてきて結構です。この診察台で仰向けになってお待ち下さい。」私への指示です。

「失礼します。消毒させて頂きます」先程の看護師さんの声だ。

「膀胱鏡の時と同じだ、只、診察台が違うな。あの時は特殊な椅子だったが、今回は平たい、普通の台だ。そんな事を考えていると

先生が現れ「かたりじさん、お待たせしました、それでは始めます。」

そう言って何かを操作していたら、診察台が10センチ程上昇した。そして、膀胱鏡の時と同じくガサガサとシートを広げ、私の下半身を覆ってしまった。そして、私のチンチンに管を差し込み始めた。

「薬を入れます」先生の声と同時にちょっと何かを感じたが、大した刺激ではなかった。

「はい終わりました、ごくろうさまでした」先生の声で終了し、瞬く間にカバーや管が片付けられてしまった。

先生もサッサと診察室へ戻って行った。日常業務の作業を済ませただけという感じで、こちらが抱いていた不安や恐怖心は、先生方には関わりの無い事だった。

看護師さん「かたりじさん、30分後に薬を出して下さい。そして今日は水分を多く採ってください。お大事に。」

いやはや全くサッパリしたものだ。拍子抜けする思いです。診察室で先生の注意事項説明を受け、痛み止め座薬(ボルタレン25㎜)の処方箋を頂いて退室。

病院での診療手続きを終えて、薬の排出を考え始めた頃には、痛みが出てきた。

「30分はとても無理だ。かなり強い痛みが襲ってきた。もう駄目だ、耐えきれない。」痛みに耐えながら病院のトイレで薬を排出した。焼けるように痛い痛い、真っ赤に出血している。まだ20分しか経っていないのに。

これから8週間の事を考えると、耐え難い大きな不安に襲われた。今後の恐怖も不安だが、さし当たり、痛みを抱えたままでは帰りの電車に乗る事もできないだろうと考え、処方されたばかりの3個のボルタレン(25㎜)を1個使う事にした。ボルタレンの薬効はすばらしく、瞬く間に痛みが引いていくのが分かった。

何とか無事に帰り着いたが、昼食がまだなのに空腹感がない。食欲も無い。疲労感ばかりが、グッタリとのしかかってくる。ウトウトし始めたと思ったら、いつの間にか眠っていた。
(11に続く→16まで)

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