悪質二種類ガン闘病記 ⑪    救いのボルタレン



痛みで目が覚めた。もう日も落ちてあたりは薄暗くなっていた。痛いのだが、多少空腹でもあったので、食事をとった。ところが、痛みは収まらず激しくなるばかりだ。我慢できなくなり、遂にボルタレンのお世話になる。すぐに楽になったが、残りが1個しかない。次の診察まで1週間もある。このままでいる訳にはいかないが、どうしよう。時計を見ると6時半。意を決して、病院へ向かう事にした。

他に方法がない。この痛みに対応できる薬は町の薬局には無いだろう。そう考えながら、妻にも同道を求めた。慎重に車を走らせながら、今は痛みも収まって安定しているが、痛み始めると恐ろしい事になってしまうだろう。ボルタレンを入れてから2時間近く経っている。病院まで1時間近く掛かるので、ノンビリしている訳にはいかない。病院の緊急外来には通院患者である旨の連絡を入れてあるので、問題は無いと思うが、行ってみなければ分からない。あれこれ考えているうちに病院到着。すぐに夜間緊急受付に行き、所定の受付を済ませて待機。程なく当直の先生が姿を現した。昼間外来診察室19番の先生だ。今夜は当直だったのだ。ラッキー。状況を説明したが、泌尿器科の先生だったので、ストレートで理解してもらえた。

「直ぐにボルタレンを出しますね。今回は25㎜が出ていますが、かたりじさんの状況からは50㎜がいいと思います。ただし、6時間以上間をあけて下さい。強い薬ですので、必ず守ってくださいね。カルテに記録しておきますので、森山先生には確実に伝わる事になります。1日最大4個、6日分で24個です。これで安心できるでしょう。」実に行き届いた先生で、私から言うことは何もなかった。

今日は初めてのBCGで、超絶痛みとか、見た事のない大量出血とか、健康な暮らしの中では味わえない、得がたい体験をしてしまった。痛みに対する絶大な恐怖まで味わった。それでも、ボルタレンに救われて、痛みが去った時の安心感は、これも初めての、説明しようのない感覚だった。痛みが人格まで奪うものだという事を、いやという程思い知らされたり、薬で安心させられたり、病気でなければ味わえない、お勧めのできない体験を一日でしてしまった。

3日が経った。BCG注入の当日、翌日、翌々日、計3日間痛みが続いたが、今日はほとんど痛くない。このサイクルで8回なら、何とかなりそうな気がする。3日痛くて、4日楽を8週間頑張れば、ガンが直る。

 

1週間後の診察。
森山先生「1週間いかがでしたか。山形先生からの伝達では痛みが激しかったそうですね。」

私「はい、私はBCGに滅法弱い事が分かりました。30分滞留が耐えられずに20分で排出してしまいました。それでも痛みには耐えきれなくて、ボルタレンを使いました。ボルタレンの薬効が持続している間はいいのですが、切れると直ちに痛みがきます。痛みにも全く弱いのですね。」

出血の状態や発熱があった事などを報告して、先生の判断を仰いだ。

森山先生「かたりじさんの体質がかなり具体的につかめてきましたね。方針も確定できそうです。頑張って、40ミリ、20分のサイクルでやってみましょう。ボルタレン50㎜をできるだけ少なく、1日3個以内を目標にしましょう。」更に続けて

「ごく最近の学会誌で、大変痛みに弱い患者さんに40ミリを4週間で終わらせてみたところ、十分な効果があり、ガン細胞が消失できたという記事が載っていました。人によって様々という事です。」

希望の持てる話や、全国の医療機関での実験的治療の成果をお話し頂いて、さあBCGの準備です。

診察室を出て、中待合で処置室からの呼び込み待ちです。例によって重装備の看護師さんに呼ばれ、この前と同じ準備をして先生の登場待ちです。実は、この先生待ちというのが辛い時間帯で、羞恥心を剥ぎ取られた姿をさらしていなければなりません。看護師さんの消毒作業とその後の放置された状態をジッと耐えなければならないのです。泌尿器科に来ているのだから、覚悟はしていますが、それでもやはり、辛い時間です。治療も辛いがこれも負けずに辛い。

先生の処置が済んで身支度を調えていた時、看護師さんが「30分経ったら薬を排出してください。今日は水分をたくさん採って下さい。」

「あれっ、20分だったはずなのに30分と言っていたな。間違いだとは思うが、どうなんだろう。私が先生と話して20分になった事を知らずにいるだけなのかしらん。」いろいろ駆け巡ったが、無視する事にした。

会計を済ませ、病院を出る時になって時計を見ると20分が経過していた。ところが、今日は痛くない。このまま排出しなくても大丈夫かもと思った。あの看護師が言った30分という声が蘇ってきた。深く考える事もなく急遽30分に変更した。しかしこれが間違いの元で、排出後の出血や痛みは桁外れにひどかった。やっぱり30分は耐えられない。間違っていた。先生と確認したばかりではないか。何と馬鹿なことをしてしまったのか。早々とボルタレンのお世話になってしまった。

帰宅しても、疲れがひどくて何もする気がおきない。ボルタレンの解熱作用のせいかしら。今日は終わらせなければならない仕事を持ち帰っているのに、こんな状態ではまずいぞ。何とかして振るい立たさなければ。そう思ってはいたが、全くやる気が起きない。ボルタレンも5~6時間は有効な筈なのに、3時間位で痛みが出てきた。出血も止まっていない。今日は何もできない。
(12に続く→16まで)

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