悪質二種類ガン闘病記 ⑫    BCGが続く



2週目のBCGで、10分長く30分滞留をしたために大きなダメージを受けた結果、3日痛くて4日楽のスケジュールが崩れてしまい、6日間痛みが続いた。最後の一日がどうにか過ごせる程度の痛みになり、ほっと一息つく事ができた。3週目からは2週目の失敗を教訓として、絶対に途中変更をしないよう心がけた。その結果、最初の3日はボルタレンの助けを借りて、痛みを遠ざけながら頑張る、残りの4日は薬無しの自然状態で過ごす、このサイクルが安定してきた。

BCG注入の前に必ず細胞診(尿中のガン細胞有無検査)用の採尿が有り、1週間後に結果が出る。レベル1から5までの段階で、1及び2はガン細胞見られず、3はグレーで再検査、4,5はガン細胞有りと診断される。
1、2、3週目はいずれもレベル3でガン細胞疑わしいだ。BCG4週後は2。5週後も2。6週後も2。遂に安定的に2になった。

森山先生「かたりじさん、治療の成果が現れました。細胞診が2で安定しました。まだ気を許す訳にはいきませんが、とりあえず一安心ですね。」

先生の明るい声がうれしい。感慨で何も言えなかった。

先生が優しく、穏やかな声で
「かたりじさん、BCG6週で細胞診が2になった事をよく覚えておいて下さい。今後万が一再発するような事があった場合はそれを思い出して頂きたいのです。折角、良い結果が出たのに、腰を折るような事を申し上げなければならないのは、まだまだ安心できない事を充分に承知しておいて頂きたいからなのです。多くの患者さんが喜びの後、再び大きな失望と落胆に陥った姿を見てきたからなのです。改めて申し上げますが、膀胱ガンは極めて強固でしぶといガンです。決して気を緩めて頂きたくありません。かたりじさんが、もしも再発という辛い状況になった場合は、6週間でガンを一掃したこの経験を思い出して、絶対に希望を無くさないで頂きたいのです。」

この先生は嘘をつかない人だ。目先の良いデータだけで患者を喜ばせて、安心させるような事ができない人なのだ。多分再発の可能性があるのだろうと思う。その時には今の先生の言葉を思い出そう。先生の真摯な態度に頭が下がる思いだ。

森山先生「かたりじさん、改めて膀胱ガンについて説明させて頂きます。なぜ手強くて、何回も再発するのかという理由は、第一に完全除去ができていないからと言えるでしょう。このガンは細胞レベルで散らばっていて、膀胱のどこかに潜んでいるのか、又はいないのか、見つけ出しにくいのです。又、ガンの存在を確定できていても、膀胱内なのか、腎臓と繋がる尿道部なのか、又はリンパ系なのか、その他泌尿器系全般に及ぶのか等、単純な方法では確定できません。目に見えない場所にある場合が多いため、手術だけでは完全除去が困難なタイプのガンなのです。1回目の手術の時のような突起型の場合は、分かりやすいのですが、平面状の場合は本当に難しいのです。」

先生の言葉は、膀胱ガンと戦う医学の現状を、包み隠さず暴露しているのだが、それが偽りの無い実情なのでしょう。

森山先生「そこで、かなりハードな方法ですが、BCGが考え出された訳です。BCGの大変優れた面として、膀胱全体に薬効が及ぶという事です。只、そのメカニズムは完全に解明された訳ではありません。まだ研究中の部分があります。そのため、医療機関では試行錯誤を繰り返しながら、手探りで治療に取り入れているのです。副作用もいろいろ報告されています。優れてはいるが研究途上の治療法だ、というふうにご理解下さい。」

先生の説明は分かりやすく、隠す事も無く、媚びる事も無く淡々と事実のみを患者に伝えていた。7週、8週と順調に細胞診レベル2が続き、BCGが終了の時を迎えた。やっとたどり着いた終着点。1週間後の細胞診もレベル2。全てが予定通り済んで、何もかも無事だ。

森山先生「かたりじさん、おめでとうございます。初期の予定通り治療が完了し、ガンを退治する事ができました。これからは、再発の芽を見逃さないように監視する事が重要になります。今後1年間は大変面倒ですが、毎月1回膀胱鏡検査と細胞診を行います。膀胱ガンの場合、胃ガンのように10年監視というような基準が確立されていません。10年以降の再発例もあります。10年位を目安に、監視を続けていく事になるかと思いますが、当面は膀胱鏡検査と細胞診です」

 

先生の診察も終わり、来月の予約票や、小冊子などを渡されたが薬は無いようだ。何となく軽々とした気分だった。病院外来棟を出てバスを待つ間、思わず大きく両手を広げて深呼吸をしてしまった。どこかで見たドラマのシーンのようで、慌てて周りを見回したが、幸い誰もこちらを見ている人はいなかった。

毎月1回の膀胱鏡検査と細胞診も回を重ねたが、再発の兆候は一切無しだった。穏やかながらも忙しい1年が過ぎようとしていた。
季節も巡り、暑い夏がやって来たが、健康上の特段の問題は無い。仕事も順調に流れている。充実した毎日で、病気に対する恐れも薄らぎがちになる。煙草も酒も2年以上お目にかかっていない。もう卒業できたんだろうと思う。特にタバコから離脱できた喜びは大きい。極悪物質という認識を持ちながら、その中毒性から抜け出せないでいたのだから。
(13に続く→16まで)

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